糸紡ぎ
結城紬の特徴の一つに、柔らかな風合いが"御座います。少しだけ撚りをかけながら人の手で紡いだ真綿に近い結城紬は素顔のままの女性と形容されると思います。
重要無形文化財の認定はこの糸紡ぎがら始まります。
一本一本手作業で出来上がりの風合いを考えながら手触りの感覚だけで紡ぎ、真綿のままの軽い着心地を産み出します。
心配事が絶えず付いてまわるのは誰でも "同じ事、しかし如何なる事があろうが一反" を織り上げるまでは緊張の糸を緩めることはできないのです。
『耐え忍ぶ心』
を備えた結城の女性の人生そのものが窺えます。
まさしく1000年以上の結城紬の歴史をうけ継ぐ伝承者の一人です。

糸紡ぎ
素手で細く細く紡ぎ、160、200亀甲になると更に細く紡いでいきます。
出来映えの良し悪しの 鍵をにぎる糸紡ぎは、熟練者でも三ヶ月以上かかる作業です。
一本一本に職人さんの気持ちが入ります。
絣括り
次の「たたき染め」の工程に進む為に『亀甲』と『蚊絣』という複雑で緻密な柄を表現する絣括りを施します。絣括りとは『防染糸』で染める部分と染めない部分を作る作業で、この括りが弱すぎたり強すぎたりするとうまく染まりません。
気の遠くなるような作業が続きます。

居座り機
最後の機織りはもっぱら女性の仕事です。
この工程に最高の状態で女性に渡すのが男の役目といわれていますが、
想いが形になるまではまだ永い緊張が続きます。
この『居座り機』で織られたもののみが国の重要無形文化財の認定を受けられる資格を持ちます。
『居座り機』は日本最古の手機を"今に伝えたもので、腰に繋いだ経糸を腰の屈伸によって張力を調節しながら織る方法。
独特の柔らかい風合いに加え何代にも渡って着られる強さを実現します。
しかし、打ち損じや模様ずれなどをするとたちまち重要無形文化財の認定を逸するどころか日の目を見ることも無くなります。
何ヶ月も神経を集中させたまま繊細な作業を続けて一つの反物を織り上げます。
結城の柄の特徴は『亀甲』と『蚊絣』或いは『縞』を用いて自然の美しさを表現します。
出来がった反物を問屋に卸す前の夜、その愛しさのあまり『結城の女は反物を抱いて寝る』と語られています。
一反に込められたその想いの深さを御想像して頂けたらと思います。

以上3つの工程を全て手作業で行われていることを最低条件として満たし
更に16項目の審査に通った結城紬のみが国の重要無形文化財としての認定を受けることが出来ます。
全ての工程において袖をとおしてくれる方に最高の幸せを願って作業がなされております。
機械には出来ない、手織りのみに成し得る想いを込めたリレーは袖を通す度に実感してしまうでしょう。
惜しくも重要無形文化財の認定を逃した作品でも格別の輝きを感じずにはいられない逸品も多く存在します。
御心配は要りません。
素顔のままの魅力を語りかけてくるその愛嬌は間違い無く手織りであることを物語るほど優しく雄弁です。


祖母から母へ、母から娘へ…。「結城紬三代」といわれるように、日本の伝統美のひとつ、結城紬と共に母の愛情も代々受け継がれていきます。結城のきものは長い年月、毎日着ても決して風合いがくずれません。逆に、着れば着るほど体に沿うように馴染んできます。自分らしさを生かした現代風の着こなしを楽しむのなら、帯を替えたり帯揚げや帯締めなどの小物でアレンジしてみてはいかがでしょうか?また、長く着て色焼けしたりシミがある場合は、裏を表にして仕立て直すと、新しい着物として着ることができます。

結城紬をお召しになった方はみなさんその軽さと、人の手のぬくもりを感じさせる肌触りのよさに驚かれます。結城のきものは軽く、たいへんあたたかいのが特徴。冬でも快適に過ごせます。また、自然の糸から生まれ、その一本一本が生きているので、天候に合わせて心地よく調節してくれます。夏には夏結城があります。見た目にも涼し気で、日本の夏にふさわしい装いです。クーラーが効いた部屋の中でも冷え過ぎず、ムレたり、汗が吹き出ることもなく、体温を放出してくれます。1年を通して季節ごとに楽しめるのが、結城紬なのです。

きものを着て外出する時、どうしても気になるのが座りじわや着くずれです。しわや着くぜれしにくいことも結城紬の魅力のひとつです。長時間正座していてもしわになりにくく、階段の上り下がりや、立ったり座ったりを繰り返しても着くずれしにくいのはうれしいこと。いろいろな場所にも安心してお出かけできますね。

結城紬に使用する織り糸は、撚りをかけずに丁寧につむいだ紬糸。糸に無理がかからないので、着れば着るほど風合いを増すのが特徴です。他のきものに比べて多少高価かもしれませんが、肌に馴染み、まるでからだの一部のような最高の着心地を自分だけが知っているという優越感を味わえるのは、結城のきものだけといえるでしょう。

一枚のきものを帯や小物を替えたりして、母娘で上手に着回してる方もいらっしゃいます。若い方からご年輩の方まで、どんな年齢の方が着ても不思議と溶け込んでしまう結城は、あたたかい人の手が生み出した魔法のきものかもしれません。また、昔は紬のきものは普段用とされていましたが、結城の白生地に後から染めを施したものならお茶会や結納、結婚披露宴などの格式あるパーティーでも帯の組み合わせなどを工夫して礼装として着用できます。伝統の決まりごとを知ったうえで自分流の着こなしをすることが大切です。いろいろな場面で結城を楽しんでください。

結城2000年の歴史を誇り数々の工程の中で、たずさわる人々のあたたかな手によって生まれる結城紬。熟練した職人技を必要とする最高級品になるほど生産がむずかしく、また後継者も少ないため、年々生産量は減少しています。ですから稀少価値は年々高くなる一方。お気に入りの結城紬にめぐり会えたその瞬間がチャンスといえるでしょう。








箔と衣装
金は古代から聖なる物質であった。金の持つつややかな黄金色と、その色調の不変性、また金の産出の希少性が、金を聖なるものと見る感情を生んだのである。有名なツタン・カーメンの黄金色のマスクをはじめ、金をしばしば古代の帝王達、神権をもって君臨する皇帝達の身を飾るものとなった。仏は金人であるとは、中国の伝承である。最高の聖者は金色の肌をもつ者とされた。仏像の黄金色はこれに由来する。また、キリスト教にあっても、イスラムによっても金はいつも聖堂の内部を飾る重要な色彩とされていた。そのことは今日も生き続けている。ヨーロッパのカトリックの大聖堂を一見する者は、誰しもそれに気付くだろう。しかし、やがて聖と俗とは分離し、かつては聖界のものであった金も、俗界の権威を示す色調となり存在となる。そこから金をもって高貴さと権威のしるしとする考えが生まれてきた。それは、現実に金の産出量の少ないことによっても、裏付けられていたのである。そしてこれはどこの文化にあっても共通の現象となった。国王や貴族達が、常に金色の多い服装をつけ、また金色をもって飾られた室内に住んだのはその理由からである。そのため金を服飾に用いることは、その衣服をつける人が、より聖なるものに近付き、力と権威の持ち主であることを表示するものとなっていた。
さまざまな金による装飾はこうして始まった。その時染織面での利用は金糸を織り込んでゆく織金。また、金のうす板や、金箔を貼り付けてその豪華な輝きを誇るふたつの方向に広がった。そのうち、箔を貼りつける方法を日本ではふつう「すり箔」と呼んできたのである。桃山時代には縫箔といわれる装束が流行し、今も能装束などにその例を見ることができる。これはすり箔と刺繍を組み合わせたものをいう。刺繍は人間の手でひとつづつ縫われる。いえば、刺繍は人間の手仕事そのままの表現である。だから多くの手間と時間を絶対的に必要とする精巧な刺繍と、金箔を貼り付けて構成された文様の組み合わせは、まさに豪華の感覚の表現には最上の技法だったのである。そしてこうした金に対する価値観は、今日でも、どこの世界でも同じようにもち伝えられている。